最終回です。
『逆転裁判』シリーズの制作が始まって、2年。
最大風速で駆け抜ける日々の記憶は常に遠く、背後から追いすがる“現在”に対処することで精いっぱい‥‥そんな毎日を重ねてきました。
『逆転裁判』の続編を作るうえで、最初に1つ、決めていたことがありました。
《前作を楽しんでくれた人、すべてに満足してもらえるものを作る》
“すべての人が満足する作品”‥‥それは制作者が夢見るマボロシにすぎないのですが、せめて、このシリーズが好きな人たちには、楽しんでもらいたい。
‥‥まあ、そんなようなコトを考えていたわけです。
そして‥‥制作が終わって、作品は世の中を駆けめぐり‥‥最近は、みなさんの声が再び、ぼくたちのもとへ届いてきています。
その声に耳をかたむけてみると‥‥やはりまだ、自分は思い上がっていたんだな‥‥と感じました。
100人が『逆転裁判』を遊べば、そこには100の物語が存在します。
ぼくたちが作り出した『逆転裁判』も、その100の物語のうちの1つであり、それ以上でもそれ以下でもあり得ない。
『ゲームを完成させるのは、半分が作り手、半分が遊び手』
‥‥全力を尽くしたぶん、このコトバを今回ほどリアルに感じたことはありません。
みなさんが体験した物語が、満足できるものであったことを祈っています。
さて。そろそろお別れです。
このコラムは、『逆転裁判2』制作の裏側をみなさんに紹介しようと思って始めました。
でも‥‥考えてみると、これはある種、自分のために書いていたのかもしれません。
遠ざかる記憶は、こうして切り取られ、カタチとなって残り‥‥今、読み返してみると、すでに懐かしさをおぼえます。
個人的に、とても楽しんで書いたコラム。
最後までつきあってくださったみなさんにも、多少なりとも楽しんでもらえれば幸いです。
‥‥それでは、この辺で。
どうもありがとうございました。
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