成歩堂
: |
これってケッキョク、自分の“ミステリー観”の押しつけだよな。 |
真 宵
: |
しかも、やや反省してるし。 |
成歩堂
: |
メイントリックに不満があるみたいだね。 |
真 宵
: |
あたし、トリックなんてどうでもいいけどな。お話がおもしろければ。 |
成歩堂
: |
うーん‥‥とにかくタクシュー、推理小説が大好きみたいだからね。小さいころから。 |
真 宵
: |
今までに、自分で何か書いたことあるのかな。 |
成歩堂
: |
中学生のころ、夏休みの自由作文で推理小説を書いたって。 |
真 宵
: |
‥‥ずいぶん古い話だね。 |
成歩堂
: |
『名探偵の犯罪』‥‥原稿用紙5枚。 |
真 宵
: |
しかも短いよ。 |
成歩堂
: |
なんでも、人類が滅亡しちゃうっていう事件でね。 |
真 宵
: |
へええ。‥‥でもそれ、だれが事件のナゾを解くの? 滅亡したんでしょ? 人類。 |
成歩堂
: |
‥‥‥‥‥‥。詳しい話は、ぼくも知らないんだけど。
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真 宵
: |
で? で? 他にはないの? |
成歩堂
: |
次は、高校の授業中、ヒマつぶしで書いた法廷小説があるよ。 |
真 宵
: |
ほ、法廷小説? まさか、それが『逆転裁判』の原型に‥‥ |
成歩堂
: |
『超・ラッキー弁護士タケ』‥‥学校で配られたプリントの裏、1枚。 |
真 宵
: |
‥‥さらに短いよ。 |
成歩堂
: |
反則まがいの強運で無罪を勝ちとる、気弱な弁護士の物語。 |
真 宵
: |
どこかで聞いたことのある主人公だね、なるほどくん。 |
成歩堂
: |
‥‥で、現在にいたる、と。 |
真 宵
: |
もう終わり? |
成歩堂
: |
いちおう『ラッキー弁護士』は好評につき、シリーズになったらしいよ。 |
真 宵
: |
うう‥‥もっと華麗な過去を期待したんだけどな。 |
真 宵
: |
かわいいよね! はみちゃん。 |
成歩堂
: |
あの髪型にたどりつくまで、デザイナーは眠れぬ夜を、涙で枕を濡らしたってウワサだよ。 |
真 宵
: |
苦労したんだねー。でも、そのおかげで、スナオで礼儀ただしい子になったじゃない。 |
成歩堂
: |
あの丁寧なしゃべり方は、タクシューのコダワリがあったんだって。 |
真 宵
: |
どういうコト? |
成歩堂
: |
もともとは、千尋さんのしゃべり方だったんだよ、あれ。 |
真 宵
: |
え、お姉ちゃんの? |
成歩堂
: |
『逆転裁判』第1話の千尋さん、最初、ヤケに丁寧にしゃべっていてさ。ビビっちまったよ、ぼく。 |
真 宵
: |
はああ‥‥ |
成歩堂
: |
あまりにも他人行儀すぎる、ってチームのみんなに言われて、ボツにしたんだって。 |
真 宵
: |
そのアイデアを、はみちゃんで復活させたワケだ。なかなかしつこいね、タクシューも。 |
成歩堂
: |
前回のコラムにも書いてあったろ。
『死ぬ思いでヒネり出したネタは、どんなささやかなものでも必ず使う』って。 |
真 宵
: |
あれ、ホンキだったんだ。 |
成歩堂
: |
‥‥とにかく、それで千尋さんのセリフ、ゼンブ書き直したんだよ。 |
真 宵
: |
なるほど‥‥。 |
成歩堂
: |
だけど、じつは直し忘れた部分が2、3カ所あるんだって。部分的だけど、丁寧な千尋さんが残ってるらしいよ。‥‥ちょっとだけ。 |
真 宵
: |
へえ! 今度、探してみようっと。 |