『逆転裁判 2』の話に入る前に、前作について触れておきたいと思います。
1年前、2001年10月12日。『逆転裁判』が発売されました。
そして、みなさんからの反響が続々とカプコンに寄せられたわけですが‥‥
感激しました。
われわれ逆転裁判チームのもとに届いたメッセージは、どれも制作の苦労を癒してあまりある、とてもあたたかいものばかりだったのです。
とりわけうれしかったのは、ふだんゲームをしない方からのお便りが目立ったこと。
「ムスメから借りて最後まで遊びました。たいへんおもしろうございました」
「友だちからムリヤリ借りさせられましたが、ハマっちゃいました!」
といった内容です。
‥‥借りずに買っていただければ、さらにうれしかったかもしれません。
乱暴な言い方をしてしまうと、ぼくにとって『逆転裁判』は、むしろ“ゲーム”よりも“ミステリー”であることのほうが重要でした。
‥‥ゲームをまったく知らない人でも気軽に遊べて、ミステリーのおもしろさを満喫できる作品にしたい‥‥
そのために、ルールや操作は極力シンプルにして、システムのメッセージも、なるべく日本語を使うようにしたのです。
じつはゲームシステム考案中、ぼくは常に、ある人物を念頭に置いていました。
実家にいる母親です。
母は、小説は読みますが、なぜか漫画の読み方がわからないそうです。
当然、プロ級の機械オンチです。
ビデオ録画の成功率は、スランプまっただ中のプロ野球選手なみ。
以前、両親にゲームマシンをプレゼントしたのですが、父親が遊んでいた将棋ゲームのCD−ROMの上から重ねて麻雀ゲームをセットして電源を入れ、
「麻雀やろうとしたら将棋が始まったぁ!」
と大騒ぎするような、ある種ツワモノです。
‥‥こんな筋金入りの母親でも楽しめる作品にしよう!
そんな個人的なスローガンのもと、ついに完成した『逆転裁判』。
さっそく発売日に実家に送りつけました。
いろいろあったようですが、幾多の困難を乗り越えて、この春、無事エンディングにたどりつくことができたようです。
全国で、似たようなドラマが展開していたことを想像すると、それはそれで楽しいですね。
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