■第1回: ごあいさつ ■

こんにちは。
逆転裁判2チームの巧 舟(たくみしゅう)です。いわくありげな名前ですが、断じて本名です。前作に引き続き、今回も企画とシナリオ、ディレクターを担当しています。

『逆転裁判2』。
‥‥みなさんのあたたかい応援のおかげで、続編の制作が実現しました。
本当にありがとうございます。
じつは、前作の制作中盤ごろ、ぼく自身も
「できれば続編を作りたいなあ」
と思っていました。そこで、部長にそれとなくお伺いを立ててみると‥‥
「おもしろいコト言うね、キミ」
みたいな笑顔で、軽やかに鮮やかにかわされてしまいました。
‥‥こんなにフットワークの軽い笑顔が存在するんだ‥‥
と、いたく感銘を受けたものです。

「続編の可能性がないのなら、自分の持っているすべてのネタを注ぎこんで、
悔いの残らない作品にしよう!」
‥‥というわけで、前作『逆転裁判』はぼくにとって、まさに一片の悔いも残さない、全力を注ぎきったゲームになりました。
制作が終了したとき、頭の中は
"これで、すべてのネタを使い尽くした"
という心地よい疲労感が、けだるく渦まいて‥‥

‥‥そこに、続編の制作が決定。
「ネタねえよ!」
それがぼくの第一声でした。"声"というより、
それはもう限りなく"悲鳴"に近い。
でも‥‥ぼく自身、やはりもう一度、彼らの活躍を見てみたい
という気持ちがありました。
悲鳴を上げながらも、だれかが背中を押してくれるのを待っていたのです。


‥‥それから、1年。
こうして、再びみなさんにごあいさつできることになりました。
『逆転裁判2』。
自信作です。
これ以上はない、最強の『逆転裁判』が完成しました。
前作をプレイしていただいた人はもちろん、今回はじめて遊ぶ人にも、
きっと満足してもらえるでしょう。

これから、このコラムでは、『逆転裁判2』制作にまつわる話をしていこうと思います。
どうぞ、よろしくおつきあいください。



■第1回《裏》

ごあいさつ


成歩堂 :
こんにちは! 成歩堂龍一です。
真 宵 :
はじめまして! 綾里真宵です。‥‥って、なるほどくん。
なんであたしたちがこんなところでしゃべってるの?
成歩堂 :
いやホラ、"制作者のコラム"ってあるだろ? ディレクターが好きなコト言ってるヤツ。
真 宵 :
ああ、あのキレイごと並べたみたいな。
成歩堂 :
うん。あれがね、ちょっとカッコつけすぎなんじゃないか、って声があってさ。
じゃあ、ぼくたちでいろいろツッコミを入れてやろうかな、って思って。
真 宵 :
‥‥なるほどくん。ツッコミを入れるのは証人だけにしておいたほうがいいと思うな。
成歩堂 :
いいっていいって。ハラ黒いところなんか、その辺の証人と変わらないから。
真 宵 :
うう‥‥証人とディレクター、両方いっぺんに敵に
回しちゃったね‥‥。
成歩堂
まあまあ。とにかくやってみようよ。

『逆転裁判2』。
‥‥みなさんのあたたかい応援のおかげで、続編の制作が実現しました。

真 宵 :
それにしても、意外に早かったよね。『逆転裁判2』。
成歩堂 :
そうだなあ。『逆転裁判』の発売が去年の10月だったから、ちょうど1年だね。
真 宵 :
楽しみだよねえ、『2』。あたし、『1』のラスト、泣いちゃったもん。‥‥っていうか、あんなにキレイに終わってるのに、どうやって続けるつもりなのかな。
成歩堂 :
それ、イチバン悩んだみたいだよ、ディレクターも。
真 宵 :
やっぱりねー。なーんにも考えてなさそうだったもんなー。
ね。ね。やっぱりさ、『1』やってないと、お話わからないのかな?
成歩堂 :
そんなことないと思うよ。《『2』から始めてもすんなり入れて、かつ自然に『1』もやりたくなるような作品こそが、正しい続編だ》って言ってたから。
真 宵 :
ふうん。ケッキョク両方じゃない。大阪商人根性、ってヤツだね。
成歩堂 :
‥‥そういうコト、言っちゃいけないと思うな。

‥‥そこに、続編の制作が決定。
「ネタねえよ!」
それがぼくの第一声でした。

成歩堂 :
ホラ、出たッ!
真 宵 :
きゃっ! い、いきなりどうしたの? なるほどくん。
成歩堂 :
こんなコト言って読者の同情を引こうとするんだからね。油断もスキもありゃしないよ。
真 宵 :
どういうこと?
成歩堂 :
実はね。どうしても使い切れなくて、ネタが1つ余っちゃったらしいんだよ。『1』を作ってたときに。
真 宵 :
え。そうなの?
成歩堂 :
それも、けっこう気に入ってたネタらしいよ。
真 宵 :
うわ。ズルいの。
成歩堂 :
だろ?
真 宵 :
で? で? どんなネタなの? 教えてよなるほどくん!
成歩堂 :
さ、さあね。‥‥ちょっと、忘れちゃったな。
真 宵 :
うわ。記憶ソーシツを装う気? ズルい、なるほどくん! 教えてくれないと‥‥
成歩堂 :
あ、危ないな。‥‥たのむから消火器はやめてくれよ。

自信作です。
これ以上はない、最強の『逆転裁判』が完成しました。

真 宵 :
‥‥断言しちゃったよ。
成歩堂 :
男らしいね。
真 宵 :
期待していいのかな。
成歩堂 :
だって、本人が言ってるだろ。"これ以下はない"って。
真 宵 :
逆だよ! "これ以上は"でしょ!
成歩堂 :
"最凶の『逆転裁判』だ"って。
真 宵 :
"最強"だよ! ワザとでしょ、なるほどくん!

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